7日間ブックカバーチャレンジ ⑤

Day 5 孔子暗黒伝

5日目にしてついに登場。諸星大二郎大先生の傑作であるこの一冊。
この作品には個人的なエピソードがありまして、それがごく最近結実した作品なんですな。

自分は子供頃から歯医者やら床屋の本棚が大好きで、そういうところに置いてある待合漫画を読むのが密かな楽しみでした。そんな待合図書の中で強烈に記憶に残っている一冊がありました。それは洞窟の中に一人っきりで閉じ込められた幼児がおり、その幼児は奇妙な肉の塊を食べて生き残っているという話でした。なんだか人の顔が付いている奇妙な肉の塊を、小さな子供が毟り取っては口に運ぶその姿がなんとも言えないインパクトがあり、また肉ともガムともいえない何かがその歯ごたえさえ想像できるような、どこの何ともわからない世界が自分の中に長い間眠っていました。

それが最近たまたま手に取った一冊の中に存在したのです。実に30年近い時を超えてその正体を現したのです。それがこの孔子暗黒伝の中に出てくる視肉というものでした。地の精を無限に吸い上げ食べても食べてもなくなることがないというこの肉。しかしそれゆえに人々は食を失う恐怖から解放されると同時に堕落してしまうという諸刃の剣。飽食の時代にあって人は感謝と謙虚さを忘れてしまうということか。

作品自体はタイトルにある通り古代中国の知恵者である孔子を巡るSFなわけですが、諸星大先生ならではのぶっ飛び具合で読んでいると蒙が開きまくります。読み進めていくと脳の眠っていた部分がバッカンバッカン開いて脳汁がブチュブチュ出てくる感じがヤバい。

ちなみに、宮崎駿御大は諸星大先生にかなり影響を受けているそうで、確かにナウシカの原作を見ると諸星タッチの片鱗を見ることができます。あの一種独特の線は真似しようとも真似ができるものではないが、そこは天才同士なるほどと思わせるシンパシーを見て取れます。例えば爆撃で吹き飛ぶモブキャラとかに似通ったところを見て取れるし、全体的に線が持つ厚みなんかも近いモノあるなぁと。

話を元に戻して、自分は諸星作品のほとんどを持っているのですが、これはそういった作品群の集大成的な感じがする一冊です。まずは妖怪ハンター辺りから入って、マッドメンとか暗黒神話を読んでからこちらを読めばいい感じ。そして何より驚くのがこれがジャンプで連載されていたという事実。恐るべし80年代であります。

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チャレンジ概要
読書文化の普及に貢献するためのチャレンジで、参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿する