尾崎の試合の戦績や最近のゲーメストの話をしながらまずは京橋、
そして天王寺、阿部野橋から近鉄へ。
阿部野橋はもう一人の不登校児であるハセコの地元である故にうっすく馴染みもあった。しかし、そこから先は未踏の地。
尾崎も松原以降は馴染みが無いらしく、それでもまあ大阪の南への行きずりには十分な輩。
車窓の景色はどんどんと色褪せていき、
それが田舎へと近づいている事を教えてくれる。
古墳が多く産出されるエリアに進んでいき、
土師ノ里、古市、そして富田林。
たどり着いたそこは空が広いド田舎だった。
大学ってこんなところにあんの?
まずはそこが胸に去来した。
そして人流に乗ってシャトルバスに。
田舎の風景見ながら揺られて10分ほどで降ろされたバス停。
そこに随分な坂があり、それを登り切った瞬間に俺は新しい世界を見る。
坂の上には開けた駐車場があり、
そこには多くの屋台が展開していた。
屋外、外なのに、
酒臭い!!
驚愕した、外なのに酒臭いとかどういうことだ!?
瞬間ここが尋常ではない事を俺たちは察した。
さすがセンスある尾崎は言った。
「これあかんちゃう?」
だよな、そう思う。俺もそう思ったがしかし、高揚した。
そう、これこれ、これこそが俺が求めていたもの。
あの中学同級の上品なお嬢様がお前にはお似合いといった意味が分かった。
つうかあの時にお前にはお似合いと言ったあの娘のセンスと俺の評価とは・・・。
この後、いろいろと回った。
廊下を使ったボーリング、映画上映、バー、スナック、射的、ロカビリーのダンスに燻製チキン。何もかもが祭りで規格外だった。
学園祭ではなく市場だったし路地裏だった。
そんな片隅で地味な四人組がアカペラで歌っていた。
時は1995年。まだアカペラブームは来ていない。
しかし、周りは酒池肉林で騒ぎまくる中で、
その四人はただ静かに、しっかりとした声で歌っていた。
まっくら森を。
俺はここに挑もうと決めた。
もうそれしか道は無いとわかった。
それが1995年11月の話。