分断の時代に

Lot.no 008 アマビエ

夏が近いので一日一Tシャツのアイデア出し週間開始である。おばあちゃんが麦茶を量産し始めるのと同じである。とはいえどうもアイデアが降ってこないので、まずはこの夏のマストなテーマでアマビエチャレンジ。実際日本のコロナ事情が想像よりも落ち着いているのはアマビエ様のおかげではあるまいか。ふとそんな気がしてくる。

妖怪というのは人の噂話や言い伝え、想像や妄想や願望が形なく姿を成した何かだろうと思う。この人魚なのかサハギンなのかよく分からないアマビエ様もそうした人々の心の在りようから生み出された精霊なのではないだろうか。有名な
アマビエ様のお姿が瓦版に描かれたのは弘化三年とあるが、その数年前には天保の大飢饉で大勢の人が飢え死に、世の中は疲弊しきっていたと推察される。そんな中で希望を求めた人々の中から編み出されたアマビエ様がいうことには、自分の姿を写して人々に見せよという(俺たちのwikipediaによればアマビエ様の原点のアマビコなる怪異ははっきりと無病長寿をうたっているとかなんだとか)。

天保年間頃を境に印刷技術や紙の供給などに進歩が見られたのであろうか、瓦版の大量印刷が進んだといわれている。つまり、アマビエ様が世に現れた時代とは世間の情報化が一歩進んだタイミングと言えなくもない。そんな世情を妖怪も反映して、自分の姿を広く人々に伝えよと瓦版でバズらせたわけだ。

アマビエ様はバズ神さまかもしれない。

この点を踏まえて考えてもやはり妖怪と人はとても仲が良いものだと思う。
アマビエ様の脇に置く言葉にもそんな意味を込めた。
ひとつは「疫病退散」もうひとつは「四海兄弟」だ。

四海兄弟とは中国の故事で人が礼を尽くすならば人類はみな兄弟になれるという話。この分断の時代にあってみなでコロナ禍を乗り越え、無謀なグローバル化や血の通わぬ経済同化による連結ではなく、知恵と慈悲を持った人間同士の程よい距離を保った連携こそが求められるのではないだろうか。なんちゃって。